こころの進化

こころの教育講演会 
 「こころの進化」松沢哲郎先生



 主催:追手門学院大学  教育研究所


人間とは何か、それをずっと考えながら、日本で、アフリカで、
チンパンジーと寄り添うようにして研究を続けてきた。彼らには
人間の言語のようなことばはない。けれども、彼らなりの心があ
り、ある意味で人間以上に深いきずながある。


人間の体が進化の産物であるのと同様に、その心も進化の産物だ。
人間にもっとも近い進化の隣人を深く知ることで、人間の心のど
ういう部分が特別なのかが照らし出され、教育や親子関係や社会
の進化的な起源が見えてくる。

想像するちからーーチンパンジーが教えてくれた人間の心

 松沢哲郎  京都大学霊長類研究所

緑の回廊プロジェクト

アフリカ・ギニアのボッソウに暮らす野生チンパンジー保全活動。
ボッソウのチンパンジーの群れは13人、松沢さんが観察を始めて
以来25年間、よそで生まれた女性チンパンジーが群れに入ってき
ません。そのため群れの血が濃くなっていると考えられます。


ここのチンパンジーは、一組の石をハンマーと台にして固いアブラヤシ
の種をたたき割って中の核を食べる。
種と石は私たちが用意。丘に石と種をおいてずっと待っている。チンパ
ジーがほかの場所で割っているのと同じように目の前でやってくれる。
その様子をカメラやビデオで記録したり、双眼鏡で観察したりする。


2007年になって初めてチンパンジーの生存率と出産率のデーターが出た。
アフリカの6つの研究機関が協力して集めた。0から4歳の間で生存率が0.7、
4歳までに30%死ぬ。出産率は年間0.2人。だから一人生むのに5年かかる。
平均出産間隔が5〜6年。10代から生み始めて50歳で亡くなるまで生む。


チンパンジーにも年寄りの女性はいる。だけどおばあさんではない。祖母の役割は
担っていない。最後まで現役で子どもを産んで大事に育てる。人間にはおばあさん
がいるが、チンパンジーにはいない。


人間とは何か。チンパンジーの研究を通じて、チンパンジーそのものを知ると同時に
人間とは何かを深く知る。比較認知科学といっている。霊長類は人間も含めたサルの
仲間であること。チンパンジーはヒト科であることを覚えて帰ってほしい。


チンパンジーが、子どもを生むビデオを見る。
生んだ母親は、わめきながらその場を離れる。
まるで魔物を見たかのように驚いて、育児放棄をする。


子どもを育てることは、本能ではない。


教育はどうか。
チンパンジーは、1、親が手本を示す、2、子どもの側は自発的にまねる、3、まね
てくる子どもに対して、子供に寛容。


人間は、1、教える、2、手を添える、3、認める。
うなずく、ほほえむ、ほめる、認める。
見守る、認められたいという希求。
それが人間らしい。


人間には、想像するちからがある。
100年先、100年前のことを考える。



絶望しないチンパンジー、希望を持つ人間




レジュメより