野獣化した、知性のない若者

野獣化した、知性のない若者

乗るたびごとに新しい感動を覚える、旅にふさわしい経験といえる。いつまで安く乗れるのかわからない、夜行高速バス。バスを往復利用したが、乗降時に興奮させられる出来事があった。

切符に近いものは持っているのだが、乗るバスを提示しない・提示できないスタッフに囲まれる、乗り場付近。10分20分30分と小刻みに発車するバスが、乗客と合わせて入場してくる。そのバスの障害にならないよう乗客を誘導するのが、スタッフの役目。

バスの業者は10社以上、スタッフはその業者グループに雇われているのだろう。場内に3名のスタッフが、配備している。彼らは次に何をするかというと、入場したバスに合わせてそのバスに乗る乗客を誘導するため、絶えず誘導の広報を「地声」で発する。

出発時刻とバスの運行ラインもしくは企業名を、大声でわめく。人が入場してくると、スタッフ総勢で、わめき散らす。まるでバナナ売りの類。乗客は見た目ほとんど日本人、大声を出さなくてもプラカードを立てればいいものをしない。

スタッフが構内で動かず、次から次のバス情報をつかめているのは、彼らの耳に着けている無線のイヤホンだろう。バスの運転手と構内のスタッフと中継する、バスグループの調整役をこなす人がいる。それなりに情報器具を活用している。

新しいバスが入って予告があるでもなく、同じ調子でスタッフがわめくので、こちらの客の方が情けなくなる。後から入ってきた青年二人が、トイレに行っている間に私の荷物を動かし、7センチほどのコンクリート溝の上に座った。後から加わってきたにもかかわらず、隣に押し寄せ、二人は喋りまくる。

耳元でしゃべるものだから、聞こえない黙れと言った。一度は収まったが、それから言うことを聞かない。アナウンスを聞くため静かにするように、仕事のためマイクなしで唸っているではないか。それを言っても、わからない、殴ろうかと思った。

隣の若者だけではない、あちこちに大声を出して会話をしている若者がいる。男も女も。スタッフが出発時刻と運行ラインを告げている間、連れのいる若者は声を張り上げて喋っている。この連中は、いったいどこの人種なんだろうかと思った。働いている人の迷惑にならないよう、他の客の邪魔にならないよう大きい声を出さないよう、配慮するができない。「ノウタリン」かと思えるほどだ。

働いた経験がない、アルバイトをしたことがない、そういう次元の話ではない。入試発表に口頭で合格の受験番号を伝えるようなもの、スタッフのやり方も聞く方も浅はかとしか言いようがない。年齢を問わず、バスを何時間待っていても、チケットになるカードを見ては出発(時刻表)と照らしている。そんな若者が、黙って待機しているのだ。

待ち合わせと言って、考えられるワードは、ケイタイしかない。電車は1車線で、プラットホームに立って居れば時刻が合っていれば間違いなく乗れる。しかし、何台もバスが出発する構内では、乗車するバスが特定できないのだ。若者たちは、友達同士で待ち合わせをする時、ケイタイに相互依存が強すぎて、<冷静に待つこと>ができないのではないか。

スタッフがわめき散らして、生声で日本語をしゃべるのに恥ずかしさを覚える。なぜこれほどまでにスタッフを抱えなければいけないのか、それがわからない。

目的の場所に到着して、同じ格好のスタッフにカードを見せて、帰りのバス乗り場はここかどうか確認をした。しかし、「わからない」と答えた、まるで警備員のセリフ。派遣労働者の典型的な仕事の割り振り、ロボットのような扱いに満足するガラパコス社会なのだ。

繰り返し場所をチェックし、帰りのバス出発時刻より2時間余り早く、バスストップのベンチに座る。その間、警備員かスタッフが事務所前にたむろしているのを見てしまう。その一人に私は、あのカードを見せバス乗り場かどうか確認をした。

あの出発場所から比べてこの違いはどうだ、天国ではないか。ベンチは備わっており、乗客はまばら、数人しかいない。待っている間、この停留所へ切符を買いに来た婦人に会った。警備員かスタッフの御仁が返答をしていた、だが切符を売っていない、明日ここに来てくれという。

待ち時間2時間ほど、スタッフと思しき5人が、まだたむろしている。これを仕事をしているのか、個人的な時間を過ごしているのか、定かではない。どちらにしても、誰かが空白な時間を過ごしているのだ。頭で理解できないことを、彼らはしている。

彼らがやっていること、すべてを彼らの責任にすることはできない。彼らにこのような働き方をさせている上司、会社の幹部たち、頭の程度を連想させる。切符を売らないスタッフ、外人の観光客の集まらないバス業界。詐欺の国にふさわしい、観光立国ではないか。