S駅を降り

  続編 S駅を降り



  40年以上前、賃貸で住んだことのある市。

  どこであったか、その場所を確かめたく尋ねた。

  駅から線路伝いに、家の中を曲がりながら歩く。

  国道沿いにその市役所が、小さいながら見えた。





  まずこれから歩きたいと、地図をもらえるか訪ねた。

  自分の住んでいた場所を探す、やり方を職員に尋ねた。

  市を出てから5年以内だと、その住んでいた場所は追求できるが、

  それ以上経過する(本籍を変更していない場合)と、その本籍

  所在地から追跡するしかないと教えてもらった。





  
  地図をもらい、これから歩く行き先は、緑色で描かれた場所。

  国道に沿って歩くしかない、バスに乗るとか考えなかった。

  よく考えると、今日は台風が近づいていると思い出す。

  ぽつりぽつり降ってきた。





  国道であっても、歩く場所が確保されていない。

  見た目高速につながっているかわからず、この先ずっと歩けるかどうかわからない。

  やはり、車の傍を連なって歩くわけにはいかない。

  道路の端っこ、歩道に沿って歩くしかない。

  歩けば地図通りか、皆目わからない。

  国道の「側道」を歩いているつもりなのだが、途中からその「側道」と

  思っている道路に、対抗して車が走ってくる。






  歩道が無くなったり、側道が現れたり消えたりする。

  目当てはバスの停留所の看板。椅子やベンチのない停留所。

  その停留所に対する、帰りの停留所の位置を確かめる。

  その停留所の心細さ。






  なんども、そのバスの運行を歩きながら見守った。

  私の遅い歩きもあるが、運行するバスの多さに驚く。

  乗客の数を確かめるまで、こちらの関心が続かない。

  今日は平日、路を歩く人も校舎の声もない。

  野菜を育てている人をみつけた、目の前に作物が見える。

  





  
  歩道のない、国道に沿って歩きながら、道路の行き先看板を

  頼るのだが、当てにするものが出てこない。

  道を間違って、後戻りする。

  公的な施設、広い場所に向かっているわけだが、目印の看板がない。

  バスの停留所もあり、人が集まる地域のはず、しかし人が見えない。






  野外活動をする場所を提供している、周りから歩きながら現地に向かう。

  そのための目印があってもいい、しかしそれがなかった。

  表の駐車場の扉が、開いていない、施設の入り口が見えてこない。

  帰りの車だろうか、帰り際に車が陣取って待機している。






  施設を歩いていると、駐車場が見えた。

  小型の車が、駐車している。

  施設につきものの、入場料金を払う入り口を探した。

  門柱、ゲートを通り抜けたが、受付は見当たらない。

  



  施設に入り、橋や囲いに使われている木を見る。

  古くはないが、新しくはない、10年ぐらいの使用年数だろうか。

  あまりにも広いので、見渡すだけで終わった。

  雨が強くなってきたので、門がしまってしまわないか心配になる。

  入場料のいらない施設を、もっと楽しみたいが時間がない。





  再び歩いて、S駅まで帰らなければならない。

  不安になってきた、私は歩いてきたのだが、誰もが車でやってくるのだろう。

  その彼らが、施設の中に入って園内を歩くだろうか。

  いまはやりの、エスカレーターやエレベーターをつけなければ、入らないのではないか。

  草や木を刈るという、ボランティアのできる人物は登場するだろうか。

  その前に、この施設は閉鎖するだろうか。






  私の今日の収穫。

  8時間は歩けることが、確かめられた。

  まだまだ、好奇心を持ち続けられる。