自筆の見取り図

  自筆の見取り図



  古い帳面にぶつかった、眼鏡をかけず名を読む。

  忘れないよう場所と地図を認めたのか。

  最初頭に浮かべたのが、自販機の設置場所。

  車に缶を積んで、自販機の補給に行くのだ。





  記憶にある店の名前がない。

  あーこれは違うぞ、ジーと店の名前を眺める。

  八百屋が多いぞ、これはそう・・・・・。

  ネコ曳を使って配達する先。

  問屋で現れた小売店へ、手に入れた品物を

  台車に載せて引き渡す、あの仕事。

  手渡すだけでなく、小売りの店まで

  配達先がノートに書かれている。

  市内だけでなく市外へも。





  昔にかえれば、八尾で本屋へ住み込み。

  本の配達をしていた。

  場所を覚え、本を覚え、渡す相手を考えていた。

  黙って置いていくわけにはいかない。





  地元では、新聞配達。

  朝がつらかった。

  何が配達の原動力になったのか。

  ほんとうにおかねが必要だった。





  地図をながめて、よくも覚えられたものだ。

  何から何まで、覚えることばかり、

  いままでやってきたことが、出来なくなる。

  多くのお客さんを捉まえることが、

  かなわなくなる、客の心が読めなくなる。





  記憶力、これから意味がなくなるに違いない。

  日本人が少なくなるんだから。

  固まって、住まなくなる。