なぜ日本の高齢者は貧困に陥るのか
なぜ日本の高齢者は貧困に陥るのか
11ページにわたる資料のなか、最初の一部のみ転記。
1、高齢者の貧困の背後にある日本の社会保障の構造的特徴
1)公的年金の格差構造
①制度の多数分立(3共済に厚生年金と国民年金で5制度)
海軍退隠令(明治7年)以来、上位の階層から年金制度が形成されてきた。
②業績主義の年金
「保険料納付期間」(=雇用の安定度)と「現役時の賃金水準の総平均」に
受給額が正比例する算定方式を採用している。
・・年金格差が非常に激しくなり、低年金・無年金の人を生み出しやすい。
国民年金では老後の最低生活が保障されない。・・制度全体が生活保護基準
以下なのに、4月から給付水準の引き上げが断行された。
加入者の約4割が未納・滞納(年金不信の広がり)。
2)医療保障の格差構造と高齢者負担の引き上げ
①制度の多数分立(3共済に組合健保と協会健保、国保、後期高齢で8制度)
②定年退職者と失業者が加盟する国民健康保険制度
もともと自営業者・農漁民対象だった制度が低所得不安定就業者対象の制度に。
疾病リスクの高い人を選別的に加入させる制度。
国保税は自治体間格差が激しいので、割高の保険料負担にあえぐ人々が
増えている。加入者の2割が保険料未納者。
③後期高齢者医療制度は国保から75歳以上の高リスクの人をさらに選別した
制度。
国保と違い世帯単位ではなく個人単位で加入する。
夫婦世帯では保険料が2人分に。
④今年度から70〜74歳の窓口負担が現行の1割から2割に引き上げられる。
3)介護保険制度の諸矛盾
①「応益負担」の名の下に、高齢者全員から年金天引きで保険料を徴収するので、
女性に多い低年金高齢者の生活を圧迫する要因になっている。保険料の段階設定
も高所得高齢者に有利。発足時に比べて保険料の基準額は2.4倍になり、
負担の限界。
②介護サービスを利用すると1割負担があるので、低年金高齢者は利用限度額まで
使えないことが多く、サービス利用の抑制が進んでいる。
利用限度額を超える部分は全額自己負担になるので、事情のある家族の場合、月に
25万円近い利用料を払っているケースもある。
③その背後で、大手介護サービス企業は高額の株主配当を行っている。
特養の絶対的不足から「老人漂流」が多発。
劣悪な有料老人ホームの族生。
「お泊りデイサービス」の利用者が劣悪な環境に。
4)生活保護の低すぎる機能
①EU諸国のように「稼働能力をもつ貧困者」が保護を受給できるようになっていない。
②生活保護法改正により資力調査と扶養義務者調査の厳格化と基準引き下げを断行。
*社会保障制度を「貧困の除去」から再構成することで過重労働社会をなくせる
・住宅保障と教育の拡充で、勤労者の平均的生涯賃金の1/4がカバーされる。
・・高い賃金を得られない中小零細企業の労働者でも生活できる人が増える。
・老後保障の充実で勤労者の個人の貯蓄動機が低下し、その分個人消費が拡大し、
消費の自由度が高まる。
・・・景気回復に貢献し、消費の「依存効果」が減少する(宣伝に左右され
ない賢明な消費者の登場)。
・労働時間の減少は労働者の自由時間を増やし、家庭生活の充実をもたらし、
文化活動・地域活動等への参加を促進する。
・・・少子化がストップする。労働者の文化が発展する。
・「労働力の窮迫販売」が解消され、低賃金・無権利労働が減少する。
・・「労働と生活の相対化」(社会保障の拡充)が求められている。
日本では労働に生活が全面的に依存したままである。
唐鎌 直義 (立命館大学) 氏のレジュメによる一部。
過剰給付と過小給付の年金、これは保障制度ではない。
国民所得の(名目)の配分の変化
俯瞰して経済を眺めてみると、明確に分かることがあります。
企業が設備投資することなく、内部留保し続けている。
カネを貯め込むこと、その反動が現在の経済を示しています。
連合が賃金闘争をしなかった、それが今の社会を作り出した。
目から鱗がおちました、「労働」そのものの尊厳を見失ったと思います。
暗黒の世界です。