コンプライアンス

  コンプライアンス − 服従の心理 −  2012年  アメリ

  COMPLIANCE

監督 クレイグ・ゾベル

 出演 アン・ダウド
    ドリーマ・ウォーカー
    バット・ヒーリー



 アメリカのあるファーストフード店。

 朝からトラブル続きの金曜日。

 警察と名乗る男から、一本の電話が入る。










 http://www.youtube.com/watch?v=WdONydDX44I













 振り込め詐欺、詐欺の心理。

 騙されやすい性格の人。

 映画を最後まで見るのに苦労、自分であれば・・・

 こんなことはありえない、と打ち消してしまう場面の連続。






 電話から届く、その声に疑いもなく、応じる人の心理。

 服従というより、いじめ現場での他人と自分の葛藤を考える。

 周りの同僚の、電話応対から、自分の受け答えがつながっている。

 周りを刺激しないよう、波を立てないよう運ぼうとする気持ちに、

 もっとも近いのではないか。






 これと共通する案件が、痴漢などの冤罪。

 犯罪者として捕えられた時の、自分の対処の仕方。

 男は、無罪であるを立証しなければいけないのか。

 そのことが、私には理解できない。

 女が、本当に被害を受けたということさえ、疑っているのに。






 一本の電話から、なぜ「勤務中」命令を受けなければいけないのか。

 その疑問が、電話の受け手である当事者「労働者」の頭に浮かばない、なぜなのか。

 現場で働いている「労働者」は、雇用主と電話の発信者・ふたつに対応している。

 電話の所有者である、雇い手(会社)を主軸において、なぜ電話の応対を断れないのか。

 




 現役の働いている人にとって、電話の応対は「実労働と大差ない」、

 ひまつぶしの時間と捉えてみる。

 モノを運ぶ労働なら、電話の取次ぎをしておれば、ただで賃金がもらえる。

 そういう無意識の時間稼ぎ、それが電話の対応ではないのか、

 本心ではないかと映画を観ながら感じた。






 経営者の側からすれば、労働者の時間管理ができていないと解する。

 現場で働いている者からすれば、客で多忙な時に長電話をする社員。

 それを見て、電話を使用している社員を、誰も責めない会社が想像できない。

 電話対応と、客の対応、どちらを優先するか。

 誰に聞くまでもない、電話をいったん切るべきなのだ。







 愉快犯。

 愉快犯に踊らされるのは、それなりの肉体労働者だという、

 皮肉な結末であった。

 電話、回線がつながらなくては、会話は成り立たない。







 倫理に関する説話にもっていきそうな映画ではある。

 私は別の視点から、バーチャルとアナログの分断ととる。

 労働からみれば、モノを販売することがミッション。

 労働は、バーチャルな場面では展開できない。

 モノの移動が、労働の原点だという考え。







 アナログとバーチャルの橋渡しをしているのが、

 電話であり、パソコンではないかと考え始めた。

 ここでスマートフォンが登場する。

 電話がパソコンが、常時稼働している労働形態は、

 異常であるという論理。






 スマートフォンが世界を駆け巡っている、現代だからこそ、

 詐欺に惑わされる労働環境へ一石を投じたのが、

 この映画ではないかと思いました。