次郎物語

次郎物語  1955年  日本

監督 清水宏
原作 下村湖人

出演 大沢幸浩  →  市毛勝之
   望月優子
   賀原夏子



本田家の次男として生まれた次郎は里子として、
お浜に育てられたが、やがて実家に戻される。
祖母のおことのえこひいきにあいながら、成長していく。



次郎の ”顔 ” を覚えている。
やんちゃな、押しの強い、顔ではない。
ひ弱な、人陰に隠れるような子ども。


家族の中の、子どもの役割といったものを
この映画で理解したのかもしれない。
次郎の顔を、今になってもなぜ覚えているのか。
次郎が登場する、その立場を観客がしっかり認める。
その次は、そのことに次郎がどう反応するのか、
じっと見守る。



この映像の観方は、立つ視点によって異なることが分かった。
自分が祖父の年代になると、登場するセリフで満たされない
ものがみえてくる。
大人同士、祖父母と両親の会話が聞こえてこない。



子ども社会にある、ものに対する愛着がうすい。
竹馬、ゴム飛行機、自転車という世界を
通り過ぎてしまった感じがする。
自分の暮らしでは、物が満たされてなにも不満はない。
だからこそ、心の底辺にある親と子の感情に、
ひたむきな思いを持ったのではないか。


映画の映像は、原作とのせめぎ合いで判断が変わるかもしれない。
観客が大人になり、老いてみると、内容が限られているように感じ。
子どもの視点からみると、これ以上幅を広げると
理解できないような描写になる可能性。
子どもでは、この範囲までという定規が引かれていたような気がする。



学校の授業で、この映画を見たような記憶がある。
その立場立場に応じて、相手の気持ちに心を配る。
そういう感情を学ぶために、この映画が選ばれたかも。
何かがわかるのではないかと、一生懸命・・・
俳優の「次郎の顔」を、見ていたのかもしれない。




最も印象に残る人、当時34歳。
賀原夏子 さん、検索してみました。
文学座の歴史など、何も知りませんでした。