みかへりの塔

みかへりの塔     1941年     日本
Introspection Tower

監督 清水宏
出演 笠智衆
   三宅邦子
原作 豊島与志雄


疑似家族で集団生活をし、家から学校へ通うという施設。
教団などの宗教も合わせた、教えに導かれ健やかに育つ、
その環境をめざしているのか。


飲料水が乏しくなると、その施設の関係者が輪になって、
協議をする場面がある。
この中で親の役でもある、女性たちが出てこず、
意見を述べる人がすべて男性たち。


この疑似家族の構成が、父と母。
その二人が、本当の男女関係なのか、形だけ同じ家で
共に生活をしているのか、非常にあいまい。


この作品のすごさは、この製作された年代1941年。
この施設が作られた当時の、対象者は16〜17歳。
それが12〜13歳に引き下げられた、
というセリフが交わされる。


孤児や片親に育てられる、子ども達。
極悪、不良という問題ではなく、親の意向に素直でない、
反抗期の子どもを集めたという感じ。
その表れが、自家用車を持つ父親の手を離れて、
施設に預けられる少女が登場する。


強烈な印象を与えるのが、裏山の池から水を引く工事。
男児たちが、一斉に鍬やつるはしなど使ってを土を掘る。
その力強い身のこなし、体の使い方。


顔を地面に向けたまま、腕を振る。
まさに大人の男の、筋力隆々の姿。
この絵を映したかったのではないかと、想像する。


さしずめ、現代だったら、児童労働。
虐待の非難で、糾弾される代物でしかない。


施設は、高い塀に取り囲まれるでもなく、逃げ出そうと
する者がいても、抑えようとはしない。
施設に、汽車が行き来をする。


管理をするに、不適合な要素を多く抱えている。
あの土木工事でつるはしを抱え上げる時、同じ動作をする仲間たち。
その動作を写し撮るとき、その間隔の狭さを感じさせられる。


作業のプロであれば、充分な間隔を持って作業をすることが第一。
それが、カメラの位置からして、危険な範囲ではないか。
つるはしをままごとのように、使い慣れていた、その当時。



裏返して言うと、こういう映画を観覧させる対象者として、
大人を想定しているのか、それとも学生たちを対象にしていたのか、
作品として取り上げるに、難しさがある。
まさに、「宗教的」。