東京暮色
東京暮色 1957年 日本
Tokyo Twilight
監督 小津安二郎
出演 原節子
有馬稲子
笠智衆
山田五十鈴
高橋貞二
田浦正巳
二人の娘を残して、母親が家出をしてしまった物語。
夫婦と親子の愛を、まじめに考えさせられる。
http://www.youtube.com/watch?v=fZPVEoYsksk
映像表現がバッタリと変わって、トーキーになった。
マージャンのパイを混ぜる音、それに階段をのぼる足音。
遊びながらも、男女の噂話が交わされる。
詰めてみれば、男女関係の機微、奇怪さ。
自分が産んだ子供と離れて、暮らしたい気持ちとはどんなものか。
次から次へと新しい人と、生活を始めることができる優柔さ。
どんな仕事でもこなせるという、自信さ加減。
一度離れた東京を、再び戻ろうとする貪欲さ。
まさに知らない未来に、人生を賭けている親世代と、
出生の過去に思い悩んでいる、若者世代。
それを対比することで、男女関係のもつれを映しているかのよう。
自己主張をしない女性を過去の作品で表してきたものを、
新たな生を求める意志のある母親像が描かれる。
妻に対する、母親に対する、恋人に対するもの。
どの人生にどん欲な、女性像を描こうとしていたのか。
そんな女性像を否定するかのように、幼子をつれて実家に舞い戻る母親。
娘だったときは、自分の意志を主張しなかった縁談。
家族の過去。
「わたし、死にたくない」
「わたし、死にたくない」
こんな表現ができる、人生を歩みたい。
自動車や電車に飛び込んでしまった、そういう結果の中、
自ら生を閉じたのではなく、意に添わなかった事故で死ぬのだ。
そういう強い主張を、映像は表している。
あらゆる場面を見て涙する。
どんなことをしても抗えない運命を、抱えて生きている。
人生の本質を、感じさせられます。