奨学金の今と未来を考える

奨学金の今と未来を考える


国立大学の授業料は、この40年間で実に45倍に値上げされています。
一方、世帯年収(中央値)は1998年に544万円だったところ、2009年
には、438万円と実に100万円以上も減少し、家計に占める学費負担
は重く、奨学金を借りざるを得ない学生が増えているのです。

他方では、最近の就職難や、就職しても不安定雇用・低賃金・ブラ
ック企業だったりして、奨学金の返済に困っている人が増えています。
皆さんと共に、奨学金の今と未来を考えたいと思います。


主催:大阪弁護士会


基調講演

奨学金制度の現状と課題


大内裕和  (中央大学



・ 奨学金制度の変化

第二種奨学金(利子付き)の導入

1984年に日本育英会法全面改正で有利子枠創設

付帯決議「育英会事業は、無利子貸与制度を根幹としてその充実、改善に
努めるとともに、有利子貸与制度は、その補完装置とし、財政が好転した
場合には廃止等を含めて検討する」

 しかし政府は大学の学費を引き上げる一方、1999年に財政投融資と財政
投融資機関債の資金で運用する有利子貸与制度をつくり、一般財源の無利
子枠は拡大せずに有利子枠のみその後の10年間で約10倍に拡大させた。
2007年度以降は民間資金の導入も始まった。

1998年度 無利子奨学金39万人 有利子奨学金11万人  計50万人

2012年度 無利子奨学金38万人 有利子奨学金96万人  計134万人



奨学金返済の困難

第一種奨学金は、返済額が毎月1万5000円以内に収まるよう設定されている。
自宅から国立大学に通う大学生の場合、毎月4万5000円の貸与を受けられる
が、これを大学卒業後に14年かけ毎月1万2857円を返還→現役ですぐに払い
はじめて37歳で終了。

第二種奨学金
毎月10万円借りる。
貸与総額480万円 貸与利率3.0% 返還総額 6.459.510円
月賦返還額26.914円 返還年数20年→すぐに払い始めて43歳。
年利10%の延滞金、延滞金発生後の返済では、お金はまず延滞金の
支払いに充当され、次いで利息、そして元本に充当される。


→元本を減らすことが困難。元本の10%以上のお金が出せなければ
半永久的に延滞金を支払い続けることになる。


2010年度の利息収入は232億円、延滞金収入は37億円に達する。これら
の金は経常収益に計上され、原資とは無関係のところに行く。この金の
行き先は銀行と債権回収専門会社


2010年度期末で民間銀行からの買い付け残高はだいたい1兆円で、年間
の利払いは23億円です。サービサーは、同年度、約5万5000件を日立キャ
ピタル債権回収など二社に委託し、16億7000万円を回収していて、その
うち1億400万円が手数料として払われている→
「金融事業」かつ「貧困ビジネス」としての奨学金



世帯年収に占める大学学費の比重は上昇→負担増、しかもかかる学費は
授業料だけではない(仕送りなど)→全大学生のなかでの奨学金受給者の
割合増加


1998年度の23.9%から2010年に5割を突破(学部昼間50.7%)
大学院修士課程で59.5%、大学院博士課程で65.5%


・高卒就職の困難
新規高卒者に対する求人数

1992年3月末  167万6000件  求人数のピーク

2003年3月末  19万8000件   最大の落ち込み

2010年3月末  19万8000件   再び、最低水準へ


奨学金の現在と運動の課題
奨学金奨学金としての機能を果たしていない


①適格者が無利子奨学金を得ていない

②将来の返済不安から奨学金を借りることを抑制

③卒業後の返還の困難さ→大学卒業後の生活や人生を左右



※「愛知県 学費と奨学金を考える会」


※「奨学金問題対策全国会議」




レジュメとして18ページの資料をいただきました。
その一部より。