非正規公務員の実態 大阪市の現場から
ジャーナリスト 藤田 和恵
1、格差の実態ーーーもはや、格差ではなく「現代の身分差別」
「市水道局事務所で働く委託先労働者」
・「副所長」なのに、基本給は約11万円
・ 更衣室兼休憩室に設置された監視カメラ
・ ミスを防ぐためとして、正規公務員が検針員を「尾行」
「委託業者の市バス運転手」
・ 年収は約300〜400万円、正規運転手740万円の半分
・ 正規運転手より長い残業時間
・ 乗客からの「公務員パッシング」だけは、正規公務員並み
「生活保護ケースワーカー」
・ 困難事例も担当、担当件数も正規職員並み
・ 賃金は生活保護水準以下
自分よりも高い給与を得ている相談者からの申請を受けることも
※大阪市に限らない全国的な事例として
「ハローワークの窓口相談員」
・ 大半が1年契約を繰り返す非正規労働者に
・ 失業や就職の相談にのる仕事なのに、自分自身がいつ失業するか分からない
・ ハローワークを所管するのは厚生労働省
失業問題やブラック企業対策を担当する厚労省が、
官製ワーキングプアを大勢生み出しているという、
笑えない ” ブラック・ユーモア ”
2、「恵まれた者」への「憎しみ」−なぜ、憎悪は「隣人」に向けられるのか
・ 雇い止めされた市の女性非常勤嘱託職員
「正規(公務員)が憎い、
でも、正規のような権力者に仕返しをするなんて、非常勤の私の力では無理。
だから、私は取材を受けることにしました。
正規の人たちの酷さを記事にしてもらうことで、私は正規に復讐したいんです。」
・ 最低賃金の市営地下鉄清掃員
「公務員には民営化で『民』の厳しさを教えたらないかん。
橋下改革が進んだら、民営化や業務委託が進んでもっと給料が下がるかもって?
どっちみち、俺は最低賃金や。これ以上、悪くなりようがないやろ」
・ 委託先の市バス運転手
「一番許せないのは、無事故、無違反、無遅刻なのに、
何年たっても正社員になられへんこと。
なのに、飲酒検査で引っかかっても正社員になれるヤツらがおる。
正規職員の縁故や」
3、「橋下さんは僕の救世主」−なぜ、官製ワーキングプアは橋本徹市長を支持したか
・既存の政治、政党の不信感
・「橋下さんは正規の給料を削って、俺らの給料を上げてくれる」という期待感
・「維新八策を読んだ胸がスーッとした」
・高齢者福祉の切り捨て、抑制に対して広がる共感
背景にあるのは世代間格差? 「恵まれた世代への憎悪」
4、物言わぬ公務員労組
・労組の事務所入り口に設置された、無人の内線電話と監視カメラ
・事務所の扉には、
「関係者以外立ち入り禁止」「マスコミ関係者の入室禁ず」の貼紙や看板
・「橋下市長から『政治的発言』と糾弾される恐れがある」として、
取材を ”拒否 ”する労組
・ 橋下市政の下、業務委託で総合評価方式が導入され、時給が1000円に。
これによりお株を奪われた恰好の公務員労組
はじめに〜大阪市交通局の非常勤嘱託職員による「市長選リスト」捏造問題について
・リストを捏造した非常勤嘱託職員について
30歳代、独身、両親と同居(取材当時)
交通局に採用される前の職場も、その前の職場もいずれ非正規
交通局では、「1年契約、手取り毎月10万円弱」
交通局を告発した理由は、「大阪市民のためになることをしたかった」
・正規職員の怒り 「あいつは維新の会のスパイ」「組合員でもないヤツがなんで・・・」
・市の調査結果より 「いつしか糾弾者として自分に高揚感を覚えるように」
・維新の会市議の指摘 「社会に対する漠然とした恨み、つらみがあったのだろう」
2013年9月18日
主催 大阪弁護士会
いただいたレジュメより転記