ケス

ケス   1969年   イギリス

Kes
A Kestrel for a Knave

監督  ケン・ローチ
出演  デヴィッド・ブラッドレイ
    ブライアン・グローヴァー
    フレディ・フレッチャ


http://www.youtube.com/watch?v=Boc2GJEf0GI



マタイによる福音書 18章10〜14節

100匹の羊がいて、そのうちの1匹が群れから迷い出ました。
99匹と1匹は、どちらが大切か。


劇中、このような聖書を読むシーンがあります。


1匹の羊にあわせて映画に登場しているのが、主人公である少年。
彼の生き方が、描かれているように思います。


組合などの社会主義の、思いを募らせます。
かつて緩やかな社会主義におおわれている、日本と言われた頃がありました。
たった一人の幸せを導き出せなければ、すべての事は”無 ”に近いと。


その当時のなごりが、いま現存している年金や国民皆保険制度ではないでしょうか。
最後に残った人のことを、頭で描きながら、他の者たちが全員で負担をする。
高級官僚や、己の権力におぼれている政治家も、この恩恵に浴しています。


労働組合が消滅しては、1匹の羊は救われることなく、群れはなくなってしまう。
その構図をこの映画に、照らし出されたように感じました。
少年の問題ではなく、観ている我々が問われていることなのです。


少年は、どんな職業に就きたいか、問われる。
炭鉱労働者、農業、事務職。
問われるまでもなく、少年キャスパーは新聞配達をして暮らしているのです。


キャスパーは、大鷲を飼い慣らしているうちに、大鷲に威厳を感じるようになる。
そこへ少年にとって、大きな出来事が起こる。
兄から頼まれた競馬券を、どうせはずれ券になると思い込み、キャスパーは買わなかった。


RESPECT
大鷲に、respect を感じていても、炭鉱夫である兄に思い至らなかった。
若気の至り、なのか。


少年キャスパーは、たびたびいじめに遭います。
生徒側だけでなく、身近な大人からも受けます。
しかし、臆することなく生きていきます。


いじめが描かれているのですが、観客はそこに眼をつけません。
少年に、respect を感じているのです。