飛行機雲 ( クラーク空軍基地 )

飛行機雲 ( クラーク空軍基地 ) 2010年   アメリカ・フィリピン  264分
Vapor Trail ( Clark )

監督 ジョン・ジャンヴィト


朝鮮、ベトナム湾岸戦争を通して米軍の重要拠点だったフィリピンの基地跡地では、
化学物質の土壌汚染による住民の深刻な健康被害が出ていた。

本作は、苦しむ被害者と家族の話を聞きとるだけでなく、支援する活動家の闘いと
その壮絶な個人史にもカメラを向け、フィリピン現代史で繰り返される社会的不公正
の構図と虐げられてきた者の尊厳に光をあてる。

さらに19世紀末の対米戦争の歴史を写真で織り交ぜ、支配関係の根深さを分析する。
土本典昭監督へのオマージュ。




http://www.ustream.tv/recorded/17749309?lang=it_IT





長時間の視聴に耐えられるか、という声が聞かれた。
観察映画に免疫をもった筆者は、風景を存分にとらえた映像に感嘆。
数年前の訪問国に、記憶を取り戻すことができた。

環境とは、そこに住んでみてこそ知りうるもの。
自然は、眼で見ただけで理解できるものではない。
旅でも同じ、身体を移動するだけで、わかったとは言えない。


環境・公害汚染、重金属・ヒソなどの土壌被害。
媒介となる、水や空気は、人間からみれば欠かすことのできない。
媒体となる水が汚染されると、地球すべてが汚染される結末に。


当事国であるアフガニスタンイラクが被害を被っているはずなのに、国際情報から遠ざけられ、
アメリカの基地であったフィリピンで、劣化ウラン弾の症状に近い被害者が生まれている。
劣化ウラン弾
自然にあり水によって希釈化される、「放射能」を連想する、我々日本人。


戦争と公害に視点を当てながら、日本国が「歴史上の写真」として映されなかった。
製作時、2010年から、
2011年3月11日を経験した日本。
地球上における、最悪の汚染を繰り返している国、この事態を生み出した国が描かれていない。


長時間のドキュメンタリーに仕上げたことで、金にうつつを抜かしている庶民には、
近づきがたい映画になった。
時間がないという理由で、作品に眼を向けようとしない。


311の被災者に、決して観てほしくないドキュメンタリーだろう。
既得権益者にとって、避けて通りたいみち。
伝統のある、公害日本なのだから。