the Apple
the Apple 1998年 イラン=フランス=オランダ
監督 サミラ・マフラムバフ
出演 マスメ・ナデリー
ザーラ・ナデリー
ゴルバナリー・ナデリー
ソグラ・ベールジ
アジゼ・モハマディ
イランの首都、テヘラン。
12歳の双子の姉妹が、父親の手によって家に監禁状態にされ、
外に出してもらえないという出来事が発覚した。
近所の人びとの署名活動によって、社会福祉事務所が調査に乗り出すが、
それでも父親は娘たちを監禁状態し続ける。
思い余ったソーシャルワーカーは、逆に父親を家に閉じ込め、娘たちを
自由にしてやる。
実際に起こった事件をテレビニュースを見て衝撃を受け、当事者たちに
会いに行ったという、監督のサミラ・マフラムバフ。
ドキュメンタリーかと思えるような、演技のやりよう。
内庭にカメラを置き、出演者を撮る。
部外者であるカメラが、登場する人物と隣り合わせにいる。
ありえないシチュエーションに、不思議さを感じた。
3年前だとありえない遅れた国の話と、他人事ととらえてきた。
ここにきて、日本社会の出来事だと発表してもおかしく思えなくなった。
コミュニティ自体が秘匿され、警察がシステムに頼り切ってしまった。
地域でコミュニティを自分たちが守っていくという、姿勢が崩れた。
個人主義の果てに、プライバシー保護に重きを置いて、社会で培う考えが
大きく後退したことに尽きる。
娘を監禁した父親に、感情移入できる<自分>がおかしいのか。
今ある社会にいのちを預ける、全部任せることが、本当の将来を守ることなのか。