盲導犬の人見知り

盲導犬の人見知り


平日の9時前、電車に乗る。
時刻を決めた約束事や急ぎでもないのに、気がせく。
日頃通勤時間は避けようと、控え目に思っているのだが・・・。

乗客の周りをみて、イメージにあるラッシュ時には程遠い
立っている乗客は、少ない。
連絡駅に到着、いつもならすぐ隣のプラットフォームへ移動する。
車掌の案内アナウンスでは、陸橋を渡らなければならない。

隣のドアで立っていた目の見えない女性に近づいた。
足元に盲導犬を従えている、それに安心してか声をかける。

連絡する電車の時刻は、あと3分。
今の状況を説明する、こちらのフォームで待っていても、
すぐに電車は来ない。
降りたフォームと乗ろうとする電車は、今降りた電車と同じ、
行先の電車であること。

乗り換えの電車に乗るには、3分しかないこと。
これからどう動くか、判断する材料を提供した。
その話をしている場所は、エレベーターの出入り口であることも。

会話をしている場所では、電車の行き先を知らせる電光表示板はみえない。
私が移動して時刻を確かめなければならない。
私が行く方向も、同じ電車なのでこの<いらいら感>はよくわかる。

そうこうしている間に、目当ての電車が向かい側のホームに現れ、乗れないまますぐ出るかと、
思いきや<なかなか>出発しない。
一段落ついたかと思ったら、ゆっくり出発した。
<間に合ったかもしれない>。

女性が言うことにやぁ、「きいていたら、はらたつわ」。
後で思い出すと、時計のようなものを出していたのだろうか?
「3分しかない」、と言っていた。
自分で判断した方が、後悔しない。

ちなみに私は、時計を持っていない。

電車の中で、他の乗客が返事をしたり、答えてあげないのにはびっくり。
周りは通勤客がほとんどで、せわしない<世話しない>したくない者でいっぱいなのだろう。
関わりは持ちたくないのだろう。

今日からは、大きな顔でつえを持って歩くことを宣言した、わたし。
彼女と私は、大して変わらない。

眼が見えなくなったら、
とても外を歩くような、気の強さを持ちえないだろう。
そういう思いで目の不自由な人を見ていたので、こちらから声掛けをしたい。

行き先の同じ電車に乗りながら、盲導犬の顔をじっくり眺める。
女性の足のした、電車の椅子と女性の足の間にもぐり、知らん顔をする。
のろり、のろり、何か悟りきったような雰囲気。
一瞬顔をあげて、私の顔を見たきり、眠たそうに寝ころぶ。

「次の駅で降りますから」
「どうも、おせわになりました」