ささやきの夏
ささやきの夏 2009年 韓国
Summer Whispers
監督 キム・ウンジュ
出演 イ・ヨンウン
ハ・ソクジン
シン・ヨンジョ、
誰からも慕われている、奇怪な存在。
孤立していそうなのに、周囲から目を離されない。
まさに注目の的、という存在だ。
主人公は、誰か?
大学の教授か、教授の妻か?
多くの養子を迎えている夫婦、教授を慕っている青年とヨンジョか。
登場人物、一様にスポットを当てている。
パソコン、ケイタイ、タイプライター、手紙。
メッセージツールが出てくるのだが、強調されているのが手紙。
映画の題の<ささやき>に、<手紙>が当てられているのか?
教授は蔵書を寄付するため、ヨンジョに整理を依頼する。
この映画の本題は、書籍であり、学問に対する畏敬がこめられている。
人を介し文化が継承され、若い人たちに受け継がれる希望を感じる。
ケイタイという道具に脅かされ、話し言葉に翻弄される今。
本文化が中心に描かれて、通信機械の影がうすい。
年老いた人を尊敬する気持ちは、以前と変わらない。
落ち着かない描写が、印象に残る。
ランの生育によくないと、長雨にさらさないで花瓶を家にいれる。
そういう細やかな神経を持ちえるのに、雨が降っても戸を閉めない。
家の中に、数えきれない蔵書があるのに、湿気のことを考えない。
ヨンジョが食台に使おうと、教授の本を足で動かす。
学術・文学で身を立てようと考えるにしては、いささか将来が危ぶまれる。