私の失敗

私の失敗

じっくり考えると、それほど大きな失敗はしていない。職業でいえば、若い時勤めていた会社の、大した不満がなかったのに。親しくしていた同僚が、辞めるという言葉になぜか歩調が合ってしまった。彼の結婚式に夫婦で出かけ、お祝いをした仲間。

営業の尖鋭部隊ではなく、顧客を対象にしたリピーター活動であった。辞める際、同調して退社するのではないか、退社理由がないのではないかと心配してくれる上司がいた。

その会社が二部上場、最近一部上場した。その青春時代に勤めた会社が、まだ生き残っているのをみる。自分が会社の将来を見通せていなかったのかと、悔しい思いに駆られる。最後には、人材としてある程度まで認めて、見守り続けてくれた上司がいたということかもしれない。

私的なこと。やはり離婚したことだろう。酒乱、不貞、ローン不払い、働きにいかない。ネガティブな行為は、なんらしていない。元妻の姉妹夫婦から問い詰められもしたが、離婚状を突きつけられ者からすれば、具体的な理由を説明できない。気分が変わった、とでもいう性格の不一致だろうか。

私が勤めている会社に乗り込んで、年金保険の手続きを依頼してきた。まだ法的に離婚をせず、働いている職場で会う。給与は振込であったはず、私が家計管理をしていたとすると、ローンの支払いに苦慮しているときだったろう。

離婚と同時に私が家を出るつもりだったが、上司に云われたひと言で変わった。「子供は人質か」、そういうと最初からその腹積もりだったかもしれない。自分が決めて買った家具、手持ちのお金を持ち出しては、突然引っ越しをした。それまで家庭内別居、家庭内離婚の結末である。

離婚と同時に出る約束を反古にしたのだから無理はない、わたしの電話番号も一緒に荷物として持って行ってしまった。彼女と娘は、同じ電話番号を抱えて二度引越しをした。今回、娘が中古のマンションを買ったという。

実は、マンションを買う話が挙がっているときに、いま私が住んでいるマンションを出ていこうかと、娘に打診した。改装費用の話に、つながらない。本来考えなければいけないのは、結婚であり結婚相手のことなのだが素通りする。

私の近くに住んで、外の世界に出ようとしない。まだ電話番号はずーと変わらず、住む家を換えずローンを支払うのだろう。この土地が、気に入ったか、彼女と娘。

人生で失敗なんて、ありやしない。つらい後には喜びがある。苦しい後には安息がある。
人の性格と全く同じ、いい面と思われるところに、裏返してみると都合悪く見える。
悪い性格が、別の見方からすると、いい面を備えていると。